Chapter.2 リップメイクの歴史とキスミー誕生秘話![@cosme NIPPON PROJECT]

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(昭和6年<1931年>の伊勢半本店)

明治から昭和の初期まで、日本女性のリップメイクは、相変わらず磁器などに刷いた紅が主流でした。明治41年(1908年)に欧米から輸入されたスティック状の口紅の販売が始まり、大正6年(1917年)には、国産初のスティック状口紅が登場します。

「おちょこ型の紅から、次第にスティック状の口紅を使う女性が増え始めたのがこの頃です。伊勢半も大正から昭和初期にかけて“艶蝶棒紅”という紙巻きの口紅を発売していました」(阿部さん)メイク法も紅を唇に小さく控えめに塗る方法から、スティック型リップを唇全体に塗る方法に変わっていったそうです。

(艶蝶棒紅 ©Ryoichi Toyama)

昭和初期になると、伊勢半は中国や満州などに向けた、海外向け製品の製造に力を入れます。「“キスミー”というブランドが誕生したのが昭和8年です。当時としては大胆なネーミングでした。この後太平洋戦争が勃発し、化粧品原料の調達は極めて難しくなります」(阿部さん) 

戦況が激しくなるにつれ、油脂も容器も手に入らず、製造がままならない時代が続きます。さらに昭和20年(1945年)東京大空襲によって、当時本社があった本所石原町は甚大な被害を受け、伊勢半も蔵1つ残して焼け出されてしまいました。

(キスミー特殊口紅の広告 昭和24年(1949年)「新映画」第6巻第2号裏表紙より部分)

「終戦を迎えた年、当主であった6代目の澤田亀之助は、焼け残った蔵にかろうじて保存されていた油脂とセルロイドを使い口紅を作り始めます。鍋と七輪を使って調合し、紙に包んでキャンディのように両端をひねった簡素な口紅でした」(阿部さん)

戦後の物資不足で原料の調達はさらに困難を極め、ときには悪質な業者に水で量を増した油をつかまされたことも。しかし、亀之助は「いずれ豊かな時代がくれば、粗悪なものは駆逐される」という信念のもと、良質な原料の調達に奔走したといいます。この、“クオリティへのこだわり”は、今も伊勢半のものづくりの源となっています。

戦後の復興が進むなかで、6代目亀之助はいちはやく海外視察に出かけます。アメリカのスーパーマーケットで豊富な化粧品が陳列されている様子を見た亀之助は、「自分で自由に化粧品を選べる販売法」に注目します。いまだ対面販売が中心だった昭和38年(1963年)、香水をパッケージに封入してフックにかけた販売法を採用。さらに昭和41年(1966年)には、業界初の“パーフェクトセルフパッケージシステム”(PSPシステム)を導入しました。

(初期のPSPディスプレイ台 昭和41年<1966年> 伊勢半本店 紅ミュージアム企業史展「愛せよコスメ!〜message from KISS ME〜」より転載)

「PSPシステムとは、台紙のついた透明のプラスチックカバーに商品を入れ、フックにかけて陳列する方法です。自分で気になるコスメを、自由に、気を使わずに選べる、今のドラッグストアの販売法の先駆けともいえるシステムでした」(阿部さん)

このPSPシステムの導入以降、セルフ市場は急速に拡大していきます。

戦後、伊勢半最初のヒット商品となったのが、“キスミー特殊口紅”です。耳鼻科で粘膜の治療に使われる“ラノリン”を配合し、「唇に栄養を与える」というキャッチコピーが、食糧難の時代に女性の心をとらえたといいます。その後落ちない口紅“プルーフ口紅”“スーパー口紅”などのヒットを経て、昭和45年(1970年)に誕生したのが、“キスミーシャインリップ”です。

(キスミーシャインリップシリーズ<初期デザイン>©Ryoichi Toyama)

日本初の“唇のつや出し専用”として登場したリップ。濡れたような質感が人気を博し、ロングセラーに成長します。「なかでも昭和53年(1978年)発売の“シャインワイン”は爆発的にヒットし、このときはシリーズ全体で年間1,500万本の売り上げを記録したと聞いています」(阿部さん)。年間1,500万本ということは、ひと月に換算にすると約125万本…! 口紅のカテゴリーでこれだけの売り上げを記録した製品は世界でも例がなく、ギネスブック級の記録といえます。

このキスミーをはじめヒロインメイクなど、伊勢半は現在約20のブランドを有する、日本有数の化粧品メーカーへと成長。「品質にこだわりながら、使いやすい価格帯のものをお届けする。これは“良いものを多くの女性に使って頂きたい”という、伊勢半の願いなのです」(阿部さん)

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