(花王 ヘアケア事業部 シニアマーケター 神谷光俊さん)
2013年からヘアケアを担当し、2017年からエッセンシャルを担当。
「良い原料や研究技術の進化があれば、積極的に採用し、製品をより良くしていくことはブランドの使命だと考えています。そうでなければ、この世界は生き残れませんからね(笑)」(神谷さん)
時代に合わせ、その時々のニーズに対応するモノづくりをおこなうためには、何が必要なのでしょうか?「【今】を正確に把握し、【未来】を予測するチカラ」と神谷さんは答えます。
「1980年代のパーマヘア、90年代のヘアカラーが一世を風靡した一方で、髪に負担がかかり、ダメージも発生していました。おしゃれでキレイに見せたいけれど、髪の悩みは深刻で…という女性が多かったんです。僕らはこれらの悩みに応える製品を作り出すことで、女性のキレイを支えていました」
「ですが、消費者はこれだけでは満足してくれない」と神谷さんは言います。
「機能性だけでなく、生活習慣に寄り添った適応力が必要なんです。髪の美しさをかなえるだけでは製品は売れません。生活のニーズにマッチした製品でなければならない」(神谷さん)
そこで強みをみせたのが花王のマーケティング力。調査する人数や頻度、切り口まで何度も調査をおこない、膨大な情報を集めていく様は、化粧品業界内でも一目置かれています。
「市場調査も納得するまで何度もおこないます。1度や2度の少人数制のグループインタビューでは終わりません」というこだわりよう。そのヘアケア調査で見えてきたものとは…?
「現代女性は『手間をかけるよりも効率的にケアをしたい』と思っている人が圧倒的に多かったんです。仕事や子育てをしていると、自分のための時間を割くのは難しい。つまり『もっと時間を大切にしたいから、効率的にケアできる方法を探している』ということでした」(神谷さん)
「もう少し補足をすると、お客さまは『お手入れをしない・したくない』わけではないということもはっきりわかりました。ただ、『時間がない』だけなのです。そこで、質問の視点を変えてみることに。女性たちに髪のお手入れで面倒・わずらわしいと感じることは何かと再調査をしたところ、1位は【髪を乾かすこと】でした。ですが、髪を乾かすことは熱い、重い、うるさいの三重苦(笑)。最近では、機能の高いヘアドライヤーも数多く登場しているにも関わらず、この悩みはなかなか消えないんです」(神谷さん)
ならば、ヘアドライヤー任せにせず、ユーザー目線でモノづくりができないかと考えた神谷さん。「速乾」機能を備えた商品を作ることを思いつく。
「キレイになりたい気持ちはあれど、『時間も手間もかかる=面倒』になってしまうのは、実にもったいないですよね。ならば、テクノロジーはもちろん、ヘアケアブランドから発信する新しい生活習慣を提案してみようと」と決心する。
(エッセンシャルがこの夏提案する【速乾タイプ】のシャンプー「エッセンシャル スマート ブロードライ」)
「【効率化】という言葉は今の生活に必要なワードであり、効率的な製品は世の中にあふれています。お掃除ロボットなどの家電に始まり、最近ではコスメでも見られるようになりました。
アイカラー、リップ、チークなどひとつですべてのパーツに使えるコスメや、1品で化粧水、乳液、美容液、クリームの機能を網羅するオールインワンゲルなどがそれに当たります。研究技術の進歩により、私たちのキレイは、短時間でシンプル、かつ効率良くが当たり前になりました。手間を省くことは悪いことではない、という流れはさらに加速していくことでしょう。
今、僕らがしなければならないのは、まさに新しい価値感を生み出すこと。毎日の生活の中にある、“面倒”を拾い上げ、生活のスタイル(=習慣)にしていくことなのです」(神谷さん)