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Nippon Beauty 再発見 全10回 美容文化研究室 @cosmeとPOLAが美容のルーツに迫ります!
第5回 「大盛況!美肌を磨いた人気スポット」
日本人は世界でも有名なキレイ好き。風呂好きな人が多いため、そのように言われているかもしれませんね。入浴が一般化したのは、江戸時代。今回は、当時庶民の社交の場であった風呂屋について紹介します。また、女性たちは、どういったものを使って体や顔をキレイにしていたんでしょうか? さらに、今回のコラムは、そのアイテムを使って@cosme編集部が実験しています。
美容の歴史について教えてくれるのは・・・ 日本の美容文化エキスパート ポーラ文化研究所 主任研究員 村田孝子先生 【写真】村田孝子先生
主に日本と西洋の化粧史・結髪史を研究。
セミナー講演、展覧会、著作などで成果を発表。

「ポーラ文化研究所」詳しくはコチラ
風呂場は江戸庶民の社交場
江 戸時代、風呂屋は皆の社交場でした。今もそうですけれど、ヘアサロンに行くといろんな世間話をするでしょう?
それがまた人に伝わっていく・・・。それと同じで、風呂場は情報交換の場だったのではないでしょうか。当時は、お金持ちか武家階級でなければ、家に風呂がありませんでした。一般的には、行水や乾布摩擦をしていたぐらい。だから皆こぞって風呂屋に行き、世間話を楽しみながら日々の汗と疲れをとるという風呂文化が発展していったのでしょうね。まさに“裸のつきあい”が展開されていたのです。

その風呂屋の発祥は、蒸し風呂だったようです。今のサウナみたいな感じでしょうか。それが気持ち良くて、冬にはあったかい湯を入れた風呂に発展していったと思われます。もともと風呂屋は江戸中期まで男女混浴でした。風俗的に良くないという理由で江戸末期に男・女別に分かれ、今の銭湯に近い形になりました。

また、江戸時代の風呂屋は、壁一面に広告が貼られていたのが特徴的です。芝居や寄席もあれば、すずめ香、長寿油など風呂屋で売っている商品の広告もありました。さらに、風呂屋では糠(ぬか)や髪油などを売っており、庶民はその糠で身体を洗っていたようです。
また、2階では、お茶を飲んで休憩する広間も設けられていました。
このように風呂屋は、庶民からこよなく愛され、憩いの場になっていたんですね。

【イラスト】全盛廊の姿湯
さらに、ユニークな特色としてあげられるのが、江戸前期に登場した湯女(ゆな)と三助の存在でしょう。湯女とは、江戸・大阪の風呂屋にいた遊女のこと。男性の背中を流したり、接待もしていました。三助は、湯を沸かしたり、お客の背中などを洗う男性のことです。

【イラスト】混浴だったなんて、考えられないわ・・・ この湯女で有名だったのが、遊女「勝山」。もともと武家出身で教養を身につけていた女性。戦乱で湯女になったけれど、お茶・お華・碁・将棋・書道など、なんでもできるインテリ遊女でした。彼女は「勝山曲」という有名なヘアスタイルを編み出した人でもあるんですよ。

江戸のクレンジングは米の「糠」!?
【イラスト】江戸名所百人美女御殿山 江 戸後期、江戸では薄化粧だった女性のメイクがだんだん濃くなっていったようです。風呂屋では、「上方(京・大阪)では濃い化粧が流行っているらしいわよ」と、もっぱらメイクの話で盛り上がったりしていたようですね。

では、白粉(おしろい)を濃く塗った顔を当時の女性たちはどのように落としていたのでしょうか?それには、風呂屋で売られていた“糠(ぬか)”や“洗い粉”が一役買っていました。
女性たちは家から、木綿の布を縫い合わせた袋を持参し、風呂屋で買った糠を入れ、それをお湯に浸して顔や身体を洗っていたのです。今で言うクレンジングに相当するものでしょうね。

糠は、次に使うまで放っておくと腐ってしまうので1回切りの使い捨て。
風呂屋から帰る時は、使用済みの糠を捨てて帰っていました。できるだけ新鮮な糠がよく落ちると言われていたようです。当時の川柳に、「ぬか袋 明けずにおきやと 母の声」という面白いものがあります。娘が先に風呂に入って糠袋使い、その後、同じ糠袋を母親が使うという情景です。母親は古い糠でもOKだけれど、娘はこれから嫁がせなきゃならないから新しい糠を使えと・・・なんとも微笑ましい親子の光景が目に浮かびますね。

糠は、当時の女性たちのメイクをキレイに落とし、肌をしっとりツルツルにする効果がありました。クレンジングするだけではなく、皮膚のための天然クリームの役割も果たしていたんですね。
また“洗い粉”というのは、小豆(あずき)や滑石(かっせき)が入っているもので、髪を洗うものと身体を洗うもの2種類があったようです。よく汚れや垢を落としたそうですよ。

このように当時の女性たちは、自宅から袋を持参して、風呂屋に行き、糠や洗い粉などを買い求め、使い分けていたんですね。当時も今と変わらず“メイク落とし”、つまりは、“クレンジング”がきちんと行われていたということが分かります。

糠でメイクが落ちるなんて!
Beauty Column 編集部で再現しました♪江戸時代のクレンジング!? 「糠(ぬか)」で現代のファンデーションはどこまで落ちる?
【写真】実践スタート! しっかりと、口紅とファンデーションをぬります。手の甲、点線の下部分に糠袋を当てていくと、すっかりメイクが落ちました!
市販の糠(ぬか)を購入。熱めのお湯を用意し、手の甲にはファンデーションと口紅をしっかり塗りました。あらかじめ用意しておいた糠袋に、買ってきた糠を半分くらい入れてしっかり口を閉じます。その後、お湯の中に糠袋を入れ、少し揉んで馴染ませます。この時の手触りは、とても柔らかく、ビーズクッションみたい。気持ちいい!
そして、手の甲を流していくと、驚くことにファンデーション、口紅がよく馴染み、スルスルと落ちていきます。糠の成分で、洗った後はお肌がしっとりツルツル♪
もう一方の手と見比べると透明感もUPしたみたい。糠で現代のファンデーション、口紅も十分落ちると判明。
江戸時代の女性は、こうして糠を使ってクレンジングしていたのですね。米糠は、肌のつっぱり感がなく、美肌効果もバッチリ!?
恐るべし先人の知恵&糠パワー! いつの時代も“しっとり感”は、大事にされていたんですね♪

※糠は食品です。肌トラブルを招く恐れがあります。真似されないようお願い致します。